ホステルを開業するのに必要な許可とは?建築基準法,旅館業法,消防法について解説 - innto(イントゥ)

ホステルを開業するのに必要な許可とは?建築基準法,旅館業法,消防法について解説

ホステルなどの宿泊施設を開業するには、法律上のさまざまな条件をクリアして許可を受ける必要があります。

今回はホステル開業と関係の深い3つの法律をピックアップしながら、それぞれに規定されている内容と許可を取るポイントを説明します。

ホステルの開業に必要な許可は3つ

宿泊施設の開業・営業に関係している法律は、「建築基準法」「旅館業法」「消防法」の3つです。

ホステルを開業する場合も、これらの法律に従い一定の基準を満たしたうえで役所、保健所、消防署の許可や確認を受けなくてはなりません。

これ以降は法律ごとに、規制や条件の概要、担当する官公署への手続き方法などを解説していきます。

建築基準法と許可の取り方

建築基準法とは、建築物の規模や設備、構造、用途などについての細かいルールを定めた法律です。

特に「建物の用途」は、ホステルなど宿泊施設の開業と深く関係しています。具体的には、建物の用途が「ホテルまたは旅館」でなければホステルとしての利用はできません。

これは建物を新築する場合も同じく「ホテルまたは旅館」として設計・建築する必要があります。

また、既存の建物を転用する場合も要注意です。

たとえば用途が「住宅」や「事務所」などになっている建物をホステルに利用する場合、あらかじめ建物の「用途変更」が必要になります。

さらに、用途変更の対象となる面積が200平方メートルを超える場合は地域を管轄する役所に「確認申請」をしなくてはなりません。

この確認申請には建物の「検査済証」や図面などの提出が必要なうえ、建築士などへの依頼費用も発生します。

用途変更確認申請が認められるかどうかのポイントは3つです。

まず、「用途地域」が合っているか(その地域に宿泊施設を設置できるか)、次いで「既存不適格建築物」でないか(建物が現在の建築基準法に合っているか)、至近距離に学校や福祉施設などが存在するかどうかです。

なおこれらのポイントは自治体によって判断基準が変わることもあるため、ホステルを開業する場合は真っ先に役所に相談してみましょう。

旅館業法と許可の取り方

旅館業法とは、「旅館業」の定義や旅館業を営業する場合の基本的な許可基準を定めた法律です。

また、旅館業法を補う細かいルールを定めた「旅館業法施行令」という政令や、都道府県ごとに独自に制定する「旅館業法施行条例」という条例もあります。

旅館業法では、宿泊施設は「旅館・ホテル営業」「簡易宿所営業」「下宿営業」の3種類に分類されます。ホステルを営業する場合は簡易宿所営業の許可を取得しなければなりません。

ホステルとして開業する建物が、簡易宿所営業の許可を受けるポイントは以下の7つです。

1.客室の延床面積が33㎡以上平方メートル(宿泊者数が10人未満の場合は3.3㎡×宿泊者数)以上であること。
2.階層式寝台(二段ベッドなど)を置く場合は、上段と下段の間隔がおおむね1m以上あること。
3.換気設備、窓、照明、防湿、排水の設備が整っていること。
4.十分な規模の入浴施設があること(付近に公衆浴場がある場合を除く)。
5.十分な規模の洗面設備があること。
6.トイレが整っていること。
7.都道府県の条例がある場合は、その基準に適合していること。

また許可申請には「申請資格」が必要です。

具体的には、以下のような人や法人は許可を受けられない場合があります。

・旅行業法違反などの刑執行終了から3年が経っていない人
・規定により営業許可を取り消され、取り消しの日から3年が経っていない人
・法人として営業する場合で、上記に該当する役員がいる

こうした基準を満たしたら、建物が所在する地域を管轄する保健所に許可申請を行い、保健所職員等による立入検査を受けます。ただし保健所によっては事前相談を求めていることもあるため、建物の改装といった具体的な行動を開始する前に、あらかじめ保健所を訪問するとスムーズでしょう。

消防法と許可の取り方

消防法とは、火災の予防や、火災や震災の被害を軽減することで国民の生命や財産を保護することを目的とした法律です。

ホステルをはじめとする宿泊施設の耐火性能や防火設備は、宿泊客の生命・財産に直結するため、当然ながら消防法でも厳格に規定されています。

具体的な判断基準は「建物が一戸建て住宅か共同住宅か」「宿泊客がいるあいだ家主が不在となるか」「客室の床面積が50㎡を超えるかどうか」などの条件によって分かれますが、一般的には、宿泊施設の延べ床面積や収容人数などに応じて、次のような設備が必要です。

・消火器
・屋内消火栓設備
・屋外消火栓設備
・自動火災報知設備
・漏電火災警報器
・消防機関へ通報する火災報知設備
・非常警報設備
・防炎性能のあるカーテンやじゅうたん
・携行用電灯
・誘導灯
・避難器具
・避難経路図
・防火管理者の専任

こうした設備を設置したら、地域を管轄する消防署に申請し、立入検査を受けて「消防法令適合通知書」を発行してもらいます。

ただし消防設備の基準も都道府県によって細かく変わることがあるため、事前に消防署を訪問して相談することが大切といえるでしょう。

まとめ

今回は、宿泊施設に関連する3つの法律、「建築基準法」「旅館業法」「消防法」について解説しました。

それぞれのポイントをまとめると以下のようになります。

・建築基準法:役所で「用途変更」についての手続きが必要(※自治体によって判断基準が変わる)
・旅館業法:保健所で「営業許可」についての手続きが必要(※簡易宿所営業許可の取得が必須)
・消防法:消防署で「法適合性」についての手続きが必要

※消防設備の基準が都道府県によって細かく変わることがある。

どの法律も、ホステルを安全に開業するためには不可欠なものです。ぜひ、参考にしていただけると幸いです。

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