ホステルを開業したい人にとって、一番の関心事とは何でしょうか?
ある人は「開業資金」について知りたいでしょうし、別の人は「必要な資格」や「手続きの方法」が気になっているかもしれません。
今回の記事ではそうしたニーズに答えながら、ホステルの始め方をわかりやすく解説していきます。
ホステルの開業に必要な資金と内訳
事業を始めるには「開業資金」と「運転資金」が必要です。
開業資金とは事業をスタートするまでの資金、運転資金とは事業を運営していくための資金です。
どちらの資金も大事ですが、これからホステルを開業したい多くの人が、まず気になるのは開業資金でしょう。
開業資金の金額や内訳は、事業の内容や事業を行う地域によって大きく変わります。
ただ、ホステルの開業に必要な開業資金は、他の平均的な事業の開業資金より多めとなります。
具体的な金額の目安について、資金の内訳に沿って説明します。
まず、ホステル開業に絶対不可欠なものとして、「物件取得にかかる資金」が挙げられます。
もし物件を購入するなら、数100万円から数1,000万円以上の資金が必要になります。
一方で賃貸の場合、ホステル向けのリフォームを認めてくれる物件はそれほど多くありません。
特殊リフォーム可能な店舗物件などを探すとなると、そのぶん家賃も割高になります。
次に「リフォーム資金」も必要です。
ホステルなどの宿泊施設を開業するには、旅館業法や消防法などの基準を満たした設備を備えなくてはなりません。
もともと宿泊施設だった建物を利用するのでない限り、ある程度のリフォームは必須です。
定員15名前後のホステルなら、宿泊施設に必要な水回りや消防設備を整えるだけでも最低300万円は必要になるでしょう。
「設備や家具家電にかかる資金」も忘れてはなりません。
旅館業法によると、宿泊施設は「寝具を提供すること」が必須条件です。
ベッドなどの家具や寝具、リネン、電化製品などを揃えていくと、少なく見積もっても100万円程度はかかると考えられます。
最後に「その他の資金」ですが、これは各種申請や登録に必要な資金のことです。
たとえば、建物の「用途変更」手続きを設計士に依頼すると、小規模なホステルでも100万円近い費用が発生します。
ここまで説明した開業資金の内訳に加え、開業後の運転資金まで含めると、ホステルの開業には最低でも600万円、できれば1,000万円前後の資金が必要といえるでしょう。
ホステルの開業に必要な資格や書類、手続きについて
ホステルを開業する際に特に必要な「資格」はありません。
ただし、「建築基準法」「旅館業法」「消防法」という3つの法律に基づく「手続き」が必要になります。
建築基準法に関する手続きと必要書類
建築基準法に基づく手続きとは、建物の「用途変更」です。
一般の住宅や事務所として使われていた建物をホステルとして利用する場合、もともと設定されていた建物の用途を「ホテル又は旅館」に変更しなければなりません。
また、用途変更の対象となる床面積が200平方メートル以上になる場合、建物の所在地を管轄する役所に「用途変更確認申請」を行います。
この手続きには建物の図面や「確認済証」など、さまざまな書類が必要です。
用途変更手続きは自分で行うこともできますが、書類作成に専門知識が必要であること、また後々のトラブルを避けるためにも建築士に依頼したほうがよいでしょう。
旅館営業法(簡易宿所営業許可の取得)に関する手続きと必要書類
旅館業法に基づく手続きとは、建物所在地を管轄する保健所への「事前相談」と「営業許可申請」です。
旅館業法によるとホステルは、「簡易宿所営業」に分類され、「客室の延床面積が33㎡以上」「階層式寝台の上段と下段の間隔がおおむね1m以上」「換気、照明、排水などの設備や入浴施設、洗面施設などが整っている」といった条件を満たさなければなりません。
これらの基準をクリアして保健所職員の立入検査を受けたら、営業許可を取得できます。
消防法に関する手続きと必要書類
消防法に基づく手続きとは、建物所在地を管轄する消防署への「事前相談」と「消防法令適合通知書の交付申請」です。
ホステルなどの宿泊施設を開業するには、消防法の規定に基づき施設の規模や宿泊人数に応じた消防施設を設置したうえで、以下の書類を作成・提出しなければなりません。
・工事着工届出書
・消防用設備等設置届出書
・防火対象物使用開始届出
・防火管理者選任届出
・消防計画届出
これらすべての基準をクリアしたうえで消防署の現地確認を受ければ、適合通知書が交付されます。
ホステルを開業するまでの流れ~ホステルの始め方~
ホステルを開業するまでの大まかな流れは以下の通りです。
1.物件探し
ホステルの営業に使う物件は、どれでもよいわけではありません。
特に用途地域の指定があるエリアでは、原則として「第一種低層住居専用地域」「第二種低層住居専用地域」「第一種中高層住居専用地域」「第二種中高層住居専用地域」「工業地域」「工業専用地域」のいずれかにある建物を選ぶ必要があります。
2.資金集め
すでに説明した通り、ホステルの開業には600万円から1,000万円程度の開業資金が必要です。銀行等で融資を受ける場合でも、全体の半分程度は自己資金で賄わなければなりません。
3.官公署への申請や届出
建物の所在地がある役所・保健所・消防署に事前相談と申請・届出の手続きを行って、ホステルとしての営業許可を受けます。
まとめ
今回は、ホステルの営業を始めるまでに必要な資金と、法律に基づく手続き内容、大まかな手続きの流れについて説明しました。
まとめると以下のようになります。これからホステルを開業される際はぜひ参考にしてみてください。
◆ホステルの開業資金は600~1,000万円前後かかる
<内訳>
・リフォーム資金は300万円程度
・設備や家具家電にかかる資金は100万円程度
・その他の資金は100万円程度
◆申請や届出が必要な官公署は以下の3カ所
・建築基準法に関する手続きと必要書類
・旅館営業法(簡易宿所営業許可の取得)に関する手続きと必要書類
・消防法に関する手続きと必要書類