ホテルの買収目的やメリット、デメリットを解説|M&Aの動向や相場を完全ガイド - innto(イントゥ)

ホテルの買収目的やメリット、デメリットを解説|M&Aの動向や相場を完全ガイド

近年、大手ホテルチェーンや海外の企業が地方のホテルを買収するといったニュースをしばしば目にします。このような買収は、なんの目的で、そしてどのようにして買収されるのでしょうか?

今回は、ホテルが買収される背景や目的、メリットやデメリット、具体的なホテル買収事例などについて説明します。

ホテルの買収とは

ホテルの買収とは、既存のホテルから不動産の所有権やホテルの経営権を買い取ることです。このようにビジネスそのものの売買は他の業界でもあることで、一般にM&Aと呼ばれています。

【M&A】合併と買い取りについて

M&Aというのは「Mergers(合併)& Acquisitions(買収)」の略で、他社のビジネスを買収して自社のビジネスに合併することです。企業まるごとだけでなく、一部の事業のみを買収することもあります。

M&Aの目的はさまざまですが、一般には中小企業経営者の高齢化に伴う後継者対策(事業承継)、経営に行き詰まった企業の救済(経営再建)、既存のノウハウ・設備や顧客を引き継いで新事業に進出する(事業の多角化)といった目的が多いようです。

ホテル買収の目的

ホテル業界についていえば、M&Aが実施される主な目的には以下のものがあります。

・インバウンドへの対応
2020年の東京オリンピックに向けて増加傾向にある訪日外国人旅行者(インバウンド)を受け入れるために、資金力のある大手企業や投資ファンドが都市部のホテル・旅館を買収するケース。

・地方ホテルの再生
インバウンドの恩恵を受けにくい地方都市のホテルなどで、大手企業や投資ファンドの資金で経営難を乗り切るため、また経営を効率化するためのアドバイスを得るためにM&Aを実施するケース。

・変化するニーズへの対応
インターネット集客が主流になる、旅行者のスタイルが変化する、インバウンドが増加するなど、ホテル業界をとりまく状況の変化に対応するために、大手資本の傘下に入って資金を確保しようとするケース。

ホテル買収のメリット/デメリット

ホテルの買収には、売却する側と買収する側それぞれにメリットがあります。

まず売却する側(売り手)にとってのメリットは、「後継者問題が解決する」、「大手のノウハウで集客力が上がる」、「従業員の雇用を継続できる」、「現経営者の負債が解消され、引退後の資金も確保できる可能性がある」といったものです。

そして買収する側(買い手)のメリットは、「増加するインバウンドに対応しやすくなる」、「短期間で拠点を増やせる」、「短期間で新規顧客が増える」「既存ホテルの許認可を引き継げる」「自社の施設が増えることでスケールメリットを生かせる」などです。

一方、ホテル業界に限りませんが、M&Aには簿外債務や偶発債務が発生する、それぞれの企業文化の融合に時間がかかる、それぞれの従業員同士に溝が生じてシナジー効果が得られなくなる、優秀な人材が流出する、といったデメリットが発生する可能性もあります。

ホテルのM&Aを実施する場合はこうしたメリット・デメリットを比較検討して、両者にとって最善の方法を模索することが必要です。

ホテル業界のM&Aの動向

現在、インバウンドの増加を背景にホテル業界のM&Aは増加傾向です。具体的には以下のような事例が見られます。

ホテルは不動産扱いなので投資の対象として増加傾向にある

ホテルの土地や建物を投資対象と見立てて、投資ファンドによるM&Aが実施されるケースがあります。ホテルや旅館は他の不動産物件と比較して相場が低いため、立地条件次第では費用対効果の大きい投資先となります。

地方の旅館を買い取る大手ホテルが増えている

観光客の減少に苦しんでいる地方の温泉付き旅館、プールなどを備えたリゾートホテルを大手ホテルチェーンが買収し、低価格を売りに業績を伸ばしている例があります。資金力が豊富にあり、チェーン全体で共通のサービスを提供することでコストダウンを図れる大手ならではの成功例といえます。

海外ホテル企業も日本国内に参入している

地方の温泉旅館を海外の企業が買収し、日本国内でインバウンド向けのホテル事業に参入するケースもあります。既存の設備やスタッフと海外のノウハウを合わせることで、活気を取り戻しているホテルも少なくありません。

ホテルの買収相場と事例

ホテルの買収相場は、立地や部屋数、温泉などの設備によって変動します。一般的には、中小規模のホテルで数千万~数億円、大規模なレジャーホテルなどで数十億円程度です。

最近の事例として挙げられるのが、2018年の10月にTSCホリスティックから大江戸温泉物語に譲渡された「タラサ志摩ホテル&リゾート」です。タラサ志摩ホテル&リゾートは伊勢志摩国立公園にある大型リゾートホテルで、買収額は15億3,000万円と発表されています。

また2018年4月には、やはり大江戸温泉物語が南木曽温泉郷の「ホテル木曽路」を取得し、同社ブランドでリニューアルオープンしました。

海外資本による買収事例としては、新三川温泉の「ホテルみかわ」が挙げられます。第三セクターが運営し、約7,000万円の累積赤字を抱えていたホテルを中国資本の日本法人が買収し、中国人観光客向けの観光拠点として整備するという報道は、ドキュメンタリー番組でも取り上げられるほど注目を集めました。

まとめ

今回は、M&Aの意味からホテルを買収する目的、売り手と買い手にとってのメリットとデメリット、最新のホテルM&Aの動向や具体的な事例について説明しました。
買収によるホテル事業への参入・拡大、売却による事業継続など、ホテルのM&Aに興味を持たれている皆さんが参考にしていただければ幸いです。

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