宿泊を伴う出張などでは、経費精算の際に「領収書」が欠かせません。とはいえホテルの領収書は予約手段、決済手段などによって発行方法や再発行などの対応が変わってくるため、実際にホテルを利用する際は注意が必要です。
そこで今回はホテルの領収書について、発行方法、分割の可否、再発行の可否という3つのポイントに絞って説明していきます。
ホテルの領収書の発行方法
リゾートホテル、ビジネスホテル、カプセルホテルなど、どのようなホテルに泊まっても領収書は発行されます。これは民法486条の中に「弁済をした者は、弁済を受領した者に対して受取証書の交付を請求することができる。」と規定され、サービス提供者に領収書発行が義務付けられているためです。
ただし領収書発行のタイミングや発行方法は、予約手段や宿泊料金の決済手段などによって以下のように異なります。
<ホテルで現金払いの場合はその場で領収書を発行>
チェックイン時にフロントで現金払いをする場合、一般的にはその場か、もしくは翌日のチェックアウト時に領収書が発行されます。スムーズに手続きを済ませるためにも、あらかじめフロントで「領収書が欲しい」旨を伝えておくと良いでしょう。
なお原則として、領収書には「作成者の氏名又は名称、取引年月日、取引内容、取引金額、交付を受ける事業者の氏名又は名称」が必要ですが(消費税法第30条9項1号)、ホテルなどの旅行業者の場合は「交付を受ける事業者の氏名又は名称」、つまり宛名は省略しても良いことになっています。
このため会社の規定で「領収書の宛名が必須」となっている場合は注意が必要です。何も申し出ないと「宛名なしの領収書」が発行される可能性があるうえ、宛名の空欄部分に自分で宛名を書くと「文書偽造」になります。領収書の発行をお願いする際は、必ず宛名まで書いてもらうようにしましょう。
<予約サイトでクレジットカード決済の場合はネットでプリントアウト>
では予約サイト経由でホテルを予約し、クレジットカード決済を行った場合、領収書はいつ・どのように発行されるのでしょうか?
この場合は決済完了後に、予約サイトの中、つまりWEB上で領収書が発行されます。厳密にはPDFファイルなどの形式で画面表示されるため、それを保存したり、プリントアウトしたりして利用します。なお予約サイトによっては領収書の表示回数が限定されていることもあるため注意が必要です。
ホテルの領収書を分割することはできる?
会社の規定によっては、ホテルの領収書を分けた方が都合の良いこともあります。具体的には宿泊経費の上限が決まっている、宿泊と飲食など項目ごとに精算を分ける必要がある、複数人数の宿泊を一度に決済するといったケースが考えられるでしょう。
<手書きやホテルで発行している領収書だと分割できる>
多くのホテルでは、領収書の分割に対応してくれるのが一般的です。ただし一部には領収書の分割が不可というホテルも存在しているため、出張でホテルを利用する際は予約時に確認しておいてください。
<予約サイトで発行する領収書だと分割はできない>
一方、予約サイトの場合は対応が分かれます。たとえば大手予約サイトのじゃらんでは領収書の分割を受け付けていませんが、るるぶトラベルでは「最大30枚までの分割が可能」といった具合です。出張時のホテルで予約サイトを利用する場合も、事前にきちんと調べておきましょう。
ホテルの領収書を紛失したら再発行はできる?
慌ただしい出張では、保管していたはずの領収書を紛失してしまうことも考えられます。ではこのような場合、ホテルや予約サイトに領収書の再発行を頼むことは可能でしょうか?
<再発行ということを記載して発行してもらえる場合もある>
領収書というのは金銭の受け渡しを証明する書類なので、同じ内容の領収書が複数あると思わぬトラブルにつながりかねません。このためホテルを含む多くの事業者では、原則として領収書の再発行には対応しないのが一般的です。
ただし一部のホテルでは、「再発行である」という記載をしたうえで再発行をしてくれるケースもあります。領収書を絶対に紛失できない状況などで、どうしても心配な場合は予約前に確認しておきましょう。
またホテル側としても、お客様からの領収書再発行依頼に快く対応することで、他のホテルとの差別化やお客様満足度の向上、リピーターの獲得につなげられるかもしれません。
<予約サイトだと再発行が可能なことが多い>
これに対し予約サイトでは、領収書の再発行を受け付けているケースが大半です。もちろん対応の内容や方法はサービス事業者ごとに違う可能性もあるため、必ずサイトのFAQや問い合わせページから確認するようにしてください。
まとめ
今回の記事では、ホテルの領収書が決済手段ごとにどのように発行されるのか、また領収書を発行してもらう際の注意点や領収書の分割、紛失時の再発行についてお話ししました。ホテル利用者の方にとっては出張などに行く際の参考に、またホテル運営者の方にとっては、サービス向上や他のホテルとの差別化を検討する際の参考にしていただければ幸いです。