ホテルの運営形態にはさまざまなものがあります。それぞれの形態にはメリットとデメリットがあり、どの形態を利用するかによって、得られる利益やリスクの大きさも異なります。
これからホテルを運営しようとするなら、これらの形態についてしっかり理解し、どれが自分に向いているかを判断しなければなりません。
ホテルの運営形態とは
ホテル運営に関係する当事者は、ホテルの所有者、経営者、運営者の3者です。これらは全て同じ法人や個人が担当することもあれば、複数の当事者が役割を分担することもあります。
この役割分担の仕組みについて「運営者」を基準に分類したものが、ホテルの運営形態です。一方で「経営者」を基準に分類したものはホテルの経営形態と呼ばれ、ホテルの運営形態とは区別されます。
今回は、ホテル運営形態の3つの種類、「所有直営方式」「リース方式」「マネジメント・コントラクト方式(MC)」について説明します。
土地や建物をホテル事業者が所有し、ホテル開発から運営を担う「所有直営方式」
「所有直営方式」とは、ホテルの所有者自らがホテルの経営と運営を担う方式で、ホテル経営の基本形ともいえるものです。
所有直営方式の代表的なホテルとしては帝国ホテル、プリンスホテル、リーガロイヤルホテルなどが挙げられます。また個人経営のペンションや民宿、温泉旅館などでも、この方式を採用しているところがあります。
所有直営方式のメリットは、「社会的信用が高い」ことです。経営者・運営者が土地や建物などの不動産所有者なので、特に金融機関からの融資を受ける場合などに有利となります。また、成長に伴ってネームバリューが上がれば、独自ブランドによるチェーン展開も可能です。
流行やニーズに合わせてホテルを増改築するなど、大きな投資を伴う意思決定を迅速に実行できるのも、所有直営方式の強みといえます。
一方、所有直営方式には資金力が必要です。ホテルの建物を購入したり建設したりするには相当なお金が必要になりますし、税金や維持費用も無視できません。経営状態の悪化と連動して収入が下がってしまうのも所有直営方式のデメリットといえるでしょう。
ホテル会社が一連の運営を担う「リース方式」
リース方式とは、ホテル会社(運営者)がホテルの所有者から建物を借りて「経営と運営」を担う方式です。ホテル会社は所有者にリース料を払う必要がありますが、ホテル事業の売り上げはホテル会社のものです。また土地や建物を持っている会社が、ホテル運営に特化した系列子会社を設立して経営を任せるケースもあります。
代表的な例は、東横インやホテルルートインなどのビジネスホテルです。
リース方式は、所有者にとってはホテルの売り上げとは関係なくリース収入を得られるというメリットがあります。また運営者にとっては不動産を購入・建設する資金がなくてもホテルの経営・運営に参入でき、短期間でのチェーン展開が可能なのも魅力です。
一方で、ホテルの売り上げが増えても所有者のリース収入は変わりませんし、売り上げが低迷しても運営者はリース料を払い続ける必要があります。これがリース方式のデメリット(リスク)といえます。
運営を全てホテル会社に委託するマネジメント・コントラクト方式(MC)
マネジメント・コントラクト方式とは、ホテルの所有者と経営者が共同でホテル運営会社を設立し、その会社に「運営の全て」を委託する方式です。
代表的な例は、星野リゾート、ホテルJALシティ、オークラホテルズ&リゾーツなどです。
マネジメント・コントラクト方式には、主に次の3つの方式があります。
◇コンビニだけじゃないフランチャイズ方式
フランチャイズ方式とは、建物の所有者や経営者が特定のホテルチェーンに加入して経営ノウハウとブランド使用権を取得する方式で、コンビニに近い業態です。所有者は売り上げを手にする代わりに、加盟料やロイヤリティを本部に支払います。
代表的な例は、アパホテル、スーパーホテル、ホテルサンルートなどです。
フランチャイズ方式のメリットは、建物の所有者がノウハウを持っていなくてもホテル経営とホテル運営に参入できる点です。ただしホテル事業の売り上げが低迷していても一定の加盟料やロイヤリティが発生するのがデメリットといえます。
ホテル同士が潰し合い防ぐリファーラル方式
リファーラル方式とは、同規模のホテルがグループをつくり相互に集客する方式です。本来は異なるホテル同士ですが、同じグループ名やブランド名を使用し、運営ノウハウやシステムも共通化します。
リファーラル方式のメリットは、宣伝・集客の効率が良いこととホテル運営のコストを抑えられること、同規模のホテル同士の潰し合いを避けられるという点です。
顧客の囲い込みをするアフェリエイト方式
アフェリエイト方式とは、所有直営方式の有名ホテル同士が共同でパンフレットを制作したり、優先予約制度を導入したりする方式です。
アフェリエイト方式のメリットは、それぞれのホテルが独自ブランドを維持したまま、共同で顧客の囲い込みができることです。ただし、原則として一つの都市で複数のホテルがタッグを組むことができないため、この方式を利用できるホテルは非常に限られます。
まとめ
今回の記事ではホテルの「運営形態」について、それぞれの特徴や具体例、メリット・デメリットについて詳しく説明しました。ホテル運営を検討している方は、ご参考くださると幸いです。