昨年2019年3月より、大阪・関西国際空港からイギリスの航空会社・ブリティッシュエアウェイズよりロンドンへの直通便が20年ぶりに運航が再開される事が発表されました。
この背景にはかつて運航休止してしまった20年前と比べて、関西のインバウンド・アウトバウンド市場が両国共に観光客の需要が高まったことで再実現したのです。
現在日本の観光業界はこのように日々変化を遂げています。
そして今回の大阪・ロンドン間の直行便の運航の発表により、日本の宿泊業界にも変化が起ころうとしています。
訪日英国人旅行者の動向傾向
現在日本では訪日外国人旅行者数が年々上昇しており、昨年2018年には初の3000万人を超え過去最高数値を記録しました。
その中でも今回注目するのが訪日英国人旅行者です。
英国人の訪日者数は年間300万人を超えており、ヨーロッパの中でもフランスやドイツの訪日者数を上回り欧州では訪日者数1位、全世界国別では訪日者数12位であるほど英国人は多く日本に訪れているのです。
その欧州最多の訪日者数を誇る英国人観光客が日本に訪れる際の直行便は現在まで羽田空港だけでした。
英国人の訪問数が多い都道府県は上記のように、唯一の訪日手段である航空便の中で日本とイギリスの直行便が運航している東京は圧倒的な訪問率となっています。
続いて東京周辺の千葉と神奈川が2位と4位の訪問率であり、3位には人気のディスティネーションである京都が遠方にも関わらずランクインしています。
そして5位には全国籍の訪日外国人旅行者数では東京をも超える人気都市、大阪の順となっています。
この訪問率の数値から訪日英国人旅行者の大部分は東京から来日し、帰国する際も東京である旅行者が多いという事が分かります。
そこで人気観光地の京都へのアクセスも良く、欧州では最多の訪日数を誇る英国人観光客が新たに利便性の高い直行便として「大阪」という選択肢が増えることにより、関東に偏っていた周遊ルートに新たな広がりが期待できます。
また訪日英国人が大阪で増加することにより、大幅に変化が現れる業界があります。
それは宿泊業界です。
英国人の増加による宿泊施設業界の変動
日本政府観光局の訪日外客数調査によると、2018年に来日した訪日外国人の中で、およそ8割以上がアジアからの訪日外国人旅行者でした。
その中でも上位4ヵ国の中国、韓国、台湾、香港の訪日アジア人観光客が最も多く利用するのが関西国際空港です。
関西はアジア人観光客にとって比較的アクセスが良く、休日にふらっと日本に訪れて観光や買い物を楽しんで帰国する旅行者が多く大阪では一時期「爆買い」というワードも流行しました。
それにより中国を除く大阪の訪日外国人旅行者は比較的短期滞在者が多いという統計が出ています。
観光庁が公表している「訪日外国人消費動向調査 報告書 平均泊数 (国籍・地域別) 」によると、全訪日外国人観光客の滞在日数が「4~6日間」の宿泊者が半数以上を占め、次点で「7~13日間」が多数を占めているのに比べて英国の訪日外国人観光客の多くは一週間以上の宿泊していることが分かります。
訪日英国人の旅行支出費
そして訪日外国人の日本滞在中の1人当たりの支出額の費目別で見てみると、アジアは比較的に『買い物』に重点を置き、旅行を行っている中、イギリスの観光客は最も『宿泊』に費用をかけているのです。
先ほどの【訪日外国人旅行者在日日数】から『中国を除く大阪の訪日外国人旅行者は比較的短期滞在者が多い』と述べましたが、ここで注目して頂きたいのは、中国と英国の平均宿泊日数が13日と12日という同じ長期滞在傾向でありながら宿泊費に大きく違いがみられるという点です。
今まで大阪で多く見られた長期宿泊者は「買い物」に重点を置くアジア人観光客であり、今後増加が見込める英国人は「観光目的」での長期旅行観光客なのです。
このような旅行者は、宿泊施設でのひと時も「観光」と捉える為、宿泊する際の施設を吟味しています。
もちろん長期滞在観光客の宿泊費を抑えたいというニーズは非常に高いのですが、今後は従来の様な「安さ」だけでなく
値段相応のサービスが行える効率的な運営が観光客のニーズとなってくるでしょう。
最後に
昨年日本には3000万人を超える訪日外国人旅行者が訪れました。
今回の関西国際空港とロンドンの直行便開通は東京オリンピックや大阪万博などの国際行事に向けた、欧州対策の大きな皮切りになってくるでしょう。
また大阪府のみが英国人旅行者による効果が生じる訳ではありません。
大阪府を含む関西の広域観光周遊ルートも多数あるため、今後の日本の政策次第で近隣県にも多くの観光客が訪れる可能性も充分あります。
この機会に宿泊施設を運営されている方々はネットに掲載している旅行会社の見直しや、施設運営の効率化に目を向けてみてはいかがでしょうか。